「月一メルマガ」の登録はこちら 匿名・無料の相談窓口はこちら

トップアップ課税とは?仕組み・背景・実務影響を米国公認会計士がわかりやすく解説

2025.07.19
03. ミニマム課税
ITRI編集部

当サイトの全ての記事は日米BIG4出身の公認会計士・税理士で構成される国際税務の専門家チームが監修しています。

トップアップ課税の仕組みから背景、実務への影響まで、実務担当者が押さえるべきポイントを米国BIG4出身の会計士が丁寧に解説します。実務経験に基づいた視点で、トップアップ課税の注意点をわかりやすくお伝えします。

トップアップ課税とは?

トップアップ課税(Top-up Tax)とは、ある国や地域での法人税負担が一定の最低水準を下回っている場合に、その差額分を他国が追加的に課税する仕組みを指します。

この制度は、OECDが主導するグローバル・ミニマム課税(GloBEルール)の中心的な考え方のひとつであり、2023年以降、世界各国で導入が進んでいます。

簡単に言えば、「税金をほとんど払っていない国があるなら、別の国でその差額を補って課税する」という考え方です。これにより、多国籍企業による極端な“節税”を抑止し、課税の公平性を確保する狙いがあります。


具体的な仕組み:どこで、どのように課税されるのか

トップアップ課税は、以下のようなステップで機能します。

  1. 多国籍企業の各国での「調整後実効税率」を算定

  2. それが15%を下回っている国の所得を特定

  3. その差額分(例:調整後実効税率が10%であれば、差額分は5%)を、親会社所在国などが追加課税

例えば、シンガポールでの調整後実効税率が10%であった場合、グループ全体の本国(たとえば日本)がGloBEルールを導入していれば、その5%の差額に対して「トップアップ課税」が日本の税務申告において発動します


トップアップ課税とQDMTTの関係

多くの国が、外国からのトップアップ課税を回避するために、自国内で差額を先に課税する制度である、QDMTT(適格国内ミニマム課税)を整備しています。

この制度を導入することで、自国で15%の実効税率が確保されることになり、他国による差額課税を受けることなく、課税権を維持できます。
つまり、トップアップ課税されるくらいなら、自国で先に課税しておこうという考え方です。


実務担当者にとっての留意点

トップアップ課税は制度としては新しい概念ですが、実務への影響はすでに顕在化しつつあります。以下の観点での対応が求められます。

  • 調整後実効税率の計算ロジックの理解とシミュレーション対応
    GloBEルールに従った独自の調整が必要となり、従来の税率概念とは異なる算定が求められます。

  • グループ内の税務データの整合性と可視化
    各国での所得・税額・控除内容を正確に把握し、連結ベースでの整合性ある報告体制を構築する必要があります。

  • 会計・税務システムのアップデート
    トップアップ課税やQDMTT(適格国内ミニマム課税)に対応した計算機能・報告機能の整備が求められ、会計・税務プロセス全体への影響も無視できません。


おわりに

トップアップ課税は、単なる追加課税というよりも、「国際的な課税主権と課税の公平性」を再定義する新たな仕組みです。各国で制度設計が進む中、グループ全体としての税負担の可視化と統制が、今後ますます重要になります。制度が複雑であるがゆえに、まずは基本的な構造を正しく理解し、自社のグループ構成や税率水準を踏まえたシミュレーションを行うことが、実務対応の出発点となります。


国際税務・海外税制の情報収集なら「国際税務総合研究所」

米国BIG4出身の会計士を中心とするプロフェッショナルチームが執筆・監修。「国際税務総合研究所」は海外進出に欠かせない国際税務の知識や海外税制の最新情報をわかりやすく届ける総合情報メディアです。

「国際税務総合研究所」の特徴

1. 実務に役立つ情報をわかりやすく解説
「国際税務総合研究所」の記事は現場で生じたリアルな質問を出発点としています。そこに専門家の知見を掛け合わせることで、単なる制度解説や教科書的な知識ではなく現場で本当に役立つ情報へと磨き上げています。制度の仕組みを単に示すだけでなく「どうすれば実務でつまずかずに進められるのか」にこだわり、経営者や担当者がすぐに実務に活かせる形で情報発信しています。

2.「実務まで踏み込んだ解説」と「匿名・無料の相談窓口」
国際税務総合研究所では、実際のFAQや相談事例をもとに専門家へ相談しなくても理解・対応できるレベルまで踏み込んだ実務解説を提供しています。さらに、匿名・無料で利用できる相談窓口を設けており、ご質問への回答は原則として1〜3営業日以内に行います。一次的な解決やセカンドオピニオンとしてのご利用も可能です。

3. 最新動向を体系的に整理する「国際税務マガジン」
国際税務に関する情報や最新動向は専門的すぎる解説が多く、「いまいちわかったようでわからない」「もっと網羅的に国際税務を学習してみたい」といった現場の声をよく聞きます。そこで当サイトでは「国際税務マガジン」を発刊し、国際税務にまつわる10の重要テーマを整理しました。必要な情報をテーマ別に確認できるだけでなく、キーワード検索でピンポイントに答えを探したり関連知識を網羅的にたどったりできるよう設計しています。


ITRI編集部

Xでは最新のニュースから記事では書ききれない実務の小ネタまで、新着記事とあわせてタイムリーに発信中。公式Xアカウントはこちら👉 X (@globaltaxsoken)

この記事は役に立ちましたか?

   「匿名・無料」の相談窓口はこちら
 秘密厳守で、専門家が丁寧に回答いたします。
  回答は原則1〜3営業日以内に行います。

米国公認会計士

日系企業の海外展開における国際税務のエキスパート。国際税務プランニングおよび移転価格税制対応を得意とし、海外ビジネスに必要な会計・税務ソリューションの提供だけではなく海外子会社の業務改善や現地スタッフとのコミュニケーション支援も行っています。アメリカ大手会計事務所BIG4の国際税務部門出身。ワシントン州米国公認会計士。


「月刊 国際税務ダイジェスト ( "月1メルマガ" ) 」のご案内

月に1度だけ、当サイトの編集部が厳選した国際税務に関する最新ニュースや注目トピックをまとめてお届け。その月に知っておくべき重要ポイントを一目で把握できるように編集していますので、最新情報のキャッチアップにぜひお役立てください。

📩 メールアドレスを登録するだけですぐにご利用いただけます。

*個人情報の取り扱いについては個人情報保護方針をご覧ください


あなたへのおすすめ記事

「月一メルマガ」の登録はこちら 匿名・無料の相談窓口はこちら
目次