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【CFC税制: 実務編⑤】合算課税対象金額の計算方法を米国公認会計士がわかりやすく解説

2025.09.15
04. 海外子会社関連
ITRI編集部

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海外子会社がCFC税制の対象に。では、いくら所得を合算したらいい?「会社単位の合算課税対象金額」の計算フローを ①基準所得金額 ②適用対象金額 ③課税対象金額の3ステップで国際税務の専門家が分かりやすく解説します。

はじめに:合算すべき所得金額はどう決まるのか

CFC税制適用の判定結果として貴社の海外子会社が「会社単位の合算課税」の対象であると判断された場合、次に答えを出すべきは「具体的に、いくらの所得を日本の親会社の所得に合算すればよいのか」という問題です。

本記事では、この「会社単位の合算課税対象金額」がどのような手順で、どのように計算されるのか、その全体像と3つのステップを分かりやすく解説していきます。

全体の流れ:3ステップの算定フロー

「会社単位の合算課税対象金額」は、最終的に日本の親会社の所得に合算される金額であり、「課税対象金額」と呼ばれます。この課税対象金額は、以下の3つのステップを経て算出されます。

STEP 1「基準所得金額を算定する」
まず、外国関係会社の決算数値を基礎として合算課税のスタート地点となる「基準所得金額」を計算します。

STEP 2「適用対象金額を算定する」
次に、基準所得金額に過去の欠損金や当期の納税額などを調整し、より実態に近い所得である「適用対象金額」を計算します。

STEP 3「課税対象金額を算定する」
最後に、適用対象金額に親会社の持分割合を乗じて、最終的に親会社の所得に合算すべき「課税対象金額」を確定させます。

それでは、各ステップの内容を具体的に見ていきましょう。


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STEP 1:基準所得金額の算定

最初のステップは、合算課税の基礎となる「基準所得金額」の算定です。この算定方法には納税者が選択できる2つの方法があります。一度選択した方法は、原則として将来的に継続して適用する必要がありますので、注意が必要です。

選択肢1:日本の法人税法を準用する方法

一つ目は、日本の法人税法の規定を用いて、外国関係会社の所得を厳密に計算し直す方法です。現地の決算書上の利益に対して、減価償却費の限度額計算、交際費等の損金不算入、評価損益の否認といった日本の税務申告で行うような調整を加えていきます。

この方法は、日本の税法に準拠するため計算が非常に正確であるというメリットがありますが、現地の会計・税務情報を詳細に入手し日本の税法に当てはめていく作業は非常に煩雑で手間がかかるというデメリットがあります。

選択肢2:本店所在地国の法令を基礎とする方法

二つ目は、外国関係会社が現地の税法に基づいて計算した課税所得を基礎として、日本の税法との間に生じる特に重要な差異のみを調整する方法です。現地で申告した課税所得に対し、日本では損金として認められない役員給与の限度超過額や寄付金、資産の評価損などを加算するといった法令で定められた限定的な項目のみを調整します。

この方法は、日本の法人税法をゼロから適用するのに比べて計算が比較的簡単であるというメリットがあります。しかし、調整できる項目が限定されているため、場合によっては日本の法令を準用する方法よりも合算すべき所得が大きく計算され、結果的に納税額が不利になる可能性もあります。

STEP 2:適用対象金額の算定

STEP 1で基準所得金額を算定したら、次にその金額をベースにより実態に即した所得である「適用対象金額」を計算します。ここで行う調整は主に2つです。

1. 繰越欠損金の控除

基準所得金額から、その事業年度開始の日以前7年以内に開始した各事業年度において生じた欠損金の額を控除することができます。これは日本の繰越欠損金控除の制度と類似の考え方と理解していただければOKです。過去の赤字と当期の黒字を相殺することで、より長期的な視点での所得に対して課税する仕組みとなっています。

2. 外国法人税の額の控除

次に、基準所得金額からその事業年度において納付した(または還付された)外国法人税の額を控除(または加算)します。これは、現地で既に納税した部分にまで日本での課税が及ぶことを避けるための調整です。

STEP 3:課税対象金額の算定

最後のステップとして、STEP 2で算出した適用対象金額に日本の親会社が持つ外国関係会社に対する持分割合を乗じ、最終的に所得に合算すべき「課税対象金額」を算出します。この時に用いる持分割合は正確には「請求権勘案保有株式等割合」と呼ばれます。

請求権勘案保有株式等割合とは?

この少し難しい名称の割合は、基本的には日本の親会社がその外国関係会社の株式を直接・間接に何%保有しているかという持分割合を指します。「請求権勘案」という言葉が付いているのは、配当を受ける権利(剰余金の配当等を請求する権利)を考慮するためです。例えば、普通株式以外に議決権のない優先株式などを発行している会社の場合、その種類株式ごとの配当請求権の割合に応じて、より実態に即した持分割合を計算する必要があります(ただし、種類株式を発行していない一般的な会社であれば、原則として普通株式の持分割合がこの割合となります)。

この計算を経て算出された「課税対象金額」が、最終的に日本の親会社の法人税申告書において益金の額として所得に加算されることになります。


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まとめ

本記事では、CFC税制の適用対象となった場合に合算すべき所得金額がどのように計算されるのかを解説しました。

  • 合算すべき「課税対象金額」は ①基準所得金額 → ②適用対象金額 → ③課税対象金額という3ステップで計算される。
  • STEP1の「基準所得金額」は 厳密だが煩雑な日本法令ベース簡易だが不利になる可能性のある外国法令ベースのいずれかを選択する。
  • STEP2の「適用対象金額」はSTEP1の金額から過去7年以内の繰越欠損金当期の納付税額を控除して算出する。
  • STEP3の「課税対象金額」は、STEP2の金額に親会社の実質的な持分割合を乗じて最終決定する。

この一連の計算は多くの専門的な判断を伴います。特にSTEP1における計算方法の選択は将来の納税額に大きな影響を与える可能性のある重要な意思決定でありますし、外国法令に準用した場合には「具体的にどの項目を調整したらよいか」という非常に専門的な判断が必要になってきます。実際の申告に際しては、必ず国際税務に精通した専門家にご相談いただくことをお勧めします。


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ワシントン州 米国公認会計士

日系企業の海外展開における国際税務のエキスパート。国際税務プランニングおよび移転価格税制対応を得意とし、海外ビジネスに必要な会計・税務ソリューションの提供だけではなく海外子会社の業務改善や現地スタッフとのコミュニケーション支援も行っています。アメリカ大手会計事務所BIG4の国際税務部門出身。ワシントン州米国公認会計士。


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