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【CFC税制:導入編①】全体像が5分でわかる|米国公認会計士・税理士がわかりやすく解説

2025.09.14
04. 海外子会社関連
ITRI編集部

当サイトの全ての記事は日米BIG4出身の公認会計士・税理士で構成される国際税務の専門家チームが監修しています。

「なぜ海外子会社の利益が日本で課税されるの?」CFC税制に関するそんな疑問にお答えします。CFC税制(タックスヘイブン対策税制)の基本を国際税務の専門家が分かりやすく解説。この記事を読めば、複雑な制度の全体像と目的がすっきり理解できます。

はじめに

グローバルに事業を展開する企業にとって国際税務は避けて通れない重要なテーマの一つです。その中でも特に複雑で、多くの経理担当者を悩ませるのが「CFC税制(外国子会社合算税制)」ではないでしょうか。

「海外子会社の利益なのになぜ日本の親会社で課税されるのだろう?」
「タックス・ヘイブン対策税制という言葉を聞いたことがあるが、一体どういう制度なのだろう?」

この記事では、こうした疑問をお持ちの方々や実務で初めてCFC税制に触れる法人経理担当者の方に向けて、CFC税制の全体像と基本的な考え方を、専門的な用語を極力避けつつやさしく解説していきます。この記事を読み終える頃には、なぜこの制度が存在し、どのような場合に問題となるのか、その本質的なイメージを掴んでいただけるはずです。

CFC税制(タックスヘイブン対策税制)とは?

CFC税制は一般に「タックスヘイブン対策税制」もしくは「外国子会社合算税制」とも呼ばれます。実はこの別名が、制度の目的を理解する上で重要な鍵となります。

CFC税制の目的は「国際的な租税回避」を防ぐこと

CFC税制の目的を一言でいえば、企業が法人税率の著しく低い国や地域(いわゆる「タックスヘイブン」)に子会社を設立し、そこに利益を移転させることで日本での課税を不当に免れる行為(租税回避)を防止することにあります。

本来、海外子会社の利益はその子会社が設立された国で課税され、日本の親会社が配当を受け取るまでは日本で課税されることはありません。しかし、この原則を悪用し、実質的な事業活動を行わない子会社(ペーパー・カンパニー)をタックスヘイブンに作り、そこに利益を留保し続ければ、グループ全体としての税負担を意図的に軽くすることが可能になってしまいます。

このような国際的な租税回避行為は日本の税収を損なうだけでなく、企業間の公正な競争条件を歪めることにも繋がります。そこで、一定の条件を満たす海外子会社の所得については、配当として日本の親会社に支払われていなくても「配当されたものとみなして」日本の親会社の所得と合算した上で日本で課税することとしたのです。これがCFC税制の基本的な仕組みとなっています。

ちなみに「CFC」とはControlled Foreign Companyの略で、日本語では「被支配外国法人」と訳されます。つまり、日本の親会社等によって支配されている外国の会社を指します。

もしCFC税制がなかったら?

この制度の重要性を理解するために、仮にCFC税制が存在しなかった場合の世界を想像してみましょう。ある日本の親会社が無形資産(商標権など)のライセンス料として多額の利益を上げていたとします。日本の法人税率が約30%である一方、ある国A(タックス・ヘイブン)の税率が0%だとします。

たとえば、日本にある親会社が日本と国Aで支払う税金の合計額を減らしたいと考えたとします。この親会社は、国Aに実体のない子会社(ペーパーカンパニー)を設立し、自社が保有していたライセンス(無形資産)をその子会社に移します。すると、本来なら日本で計上されるはずだったライセンス料収入が、国Aの子会社に入るようになります。国Aでは法人税率が0%のため、子会社で得た利益には現地で税金がかかりません。さらに、その利益を日本に配当せずに子会社に留保し続ければ、日本側で課税されることもありません。

この結果、もしCFC税制がなければ、グループ全体として支払う税金を大幅に減らす(上記のケースでは、税金を0にする)ことが可能になってしまいます。CFC税制はまさにこうした国際取引を利用した意図的な課税逃れを防ぐ役割を担っています。

ITRI編集部

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CFC税制の全体像を掴むための2つのポイント

では、具体的にどのような場合にCFC税制が適用されるのでしょうか。詳細な判定フローは非常に複雑ですが、全体像を掴むためにはまず以下の2つの大きなポイントを押さえることが重要です。

ポイント1:どんな会社が対象になるのか?

まず問われるのは「その海外子会社は租税回避のために利用されている疑いがあるか?」という点です。税法ではこれを客観的な基準で判断していきます。非常に簡略化して言えば、CFC税制が問題となるのは主に次のような特徴を持つ海外子会社です。

  • 日本の親会社などに形式的・実質的に支配を受けていること(例:子会社の株式持分が50%を超える等)
  • 海外子会社が法人税率の著しく低い国・地域に所在すること

つまり、「日本の会社がコントロールできて、かつ税金が極端に安い国にある子会社」がまず最初のスクリーニング対象となるイメージです。税率が低いだけでは直ちにCFC税制の適用対象となるわけではありませんが、税務当局から「租税回避の意図があるのではないか」という観点で見られやすくなる可能性があります。

ポイント2:適用されるとどうなるのか?

もし様々な判定の結果として貴社の海外子会社がCFC税制の適用対象と判断された場合、その子会社の利益(所得)は日本の親会社の利益に「合算」されます。これが「外国子会社合算税制」とも呼ばれる所以です。

重要なのは、海外子会社から親会社へ実際に配当金が支払われているかどうかとは無関係に、税金の計算上、強制的に利益が合算されてしまうという点です。この仕組みにより、海外子会社の利益に対して現地でも日本でも課税が行われることで国際的な二重課税が発生する可能性があります。また、これにより日本の親会社は手元にないはずの海外子会社の利益を含めた金額を基に法人税を納める必要が出てきます。予期せぬ法人税の負担は企業にとって大きなキャッシュフローの負担となり得ますので、この点も併せて注意が必要となります。

次に知るべきこと:CFC税制の具体的な判定ステップ

この記事ではCFC税制の基本的な考え方と全体像を解説しました。この全体像の理解を基に、実務ではより具体的なステップに沿ってCFC税制適用の要否を判定していくことになります。もし貴社の海外子会社がCFC税制の対象になるかもしれないと感じた場合、以下のようなポイントが重要になります。なお、これらの詳細については別の記事で詳しく解説していきます。

  • どのような法人が適用対象となるか(具体的にどのように適用有無を判定すればよいか)
  • 合算課税対象金額の算定方法(どのように税金を計算すればいいのか)
  • 適用判定と課税のタイミング(いつ、どのタイミングで申告すればいいのか)

これらの判定は非常に専門的かつ複雑であり、一つ一つの解釈を誤ると納税額に大きな影響を及ぼす可能性がありますので、注意深く見ていきましょう。

まとめ

今回はCFC税制(タックスヘイブン対策税制)の全体像について、その本質的な部分に絞って解説しました。CFC税制はグローバルに事業を展開する上で必ず理解しておくべき重要な税法です。しかし、その判定は極めて複雑で、安易な自己判断は危険を伴います。当サイトの記事を通じてまずは制度の全体像を掴んでいただき、具体的な事案については国際税務に精通した専門家にご相談されることをお勧めします。


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ワシントン州 米国公認会計士

日系企業の海外展開における国際税務のエキスパート。国際税務プランニングおよび移転価格税制対応を得意とし、海外ビジネスに必要な会計・税務ソリューションの提供だけではなく海外子会社の業務改善や現地スタッフとのコミュニケーション支援も行っています。アメリカ大手会計事務所BIG4の国際税務部門出身。ワシントン州米国公認会計士。


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