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10. みんなの国際税務Q&A

国際税務Q&A:移転価格の観点で、本社からのローン借入時の利率は何%に設定すれば問題ないか?

2025.07.24

当サイトの全ての記事は、米国のグローバル企業を中心に国際税務の実務経験を積んだ米国公認会計士によって執筆・監修されています。国際税務総合研究所は、「わかりやすく、正確に、そして実務に役立つ」国際税務の情報を発信することを目的とした国際税務の総合情報メディアです。専門用語をかみくだいた表現と、現場視点に基づく実務解説を通じて、基礎から経営者・実務担当者まで広く役立つコンテンツをお届けしています。

ご質問の内容

お世話になります。米国法人の立ち上げに伴い、日本の本社から米国法人にUSDで500万ドルほどの貸付をする予定なのですが、貸付金の利率は何%くらいに設定すれば移転価格税制の観点で問題ないでしょうか?市場利率ベースで設定するべきという話を聞きましたが、具体的にどこの金利を参考にすればいいのかも含めて教えてもらえると助かります。

国際税務総合研究所 編集部からの回答

ご質問ありがとうございます。

すでにご認識されている通り、親会社から米国子会社への貸付については移転価格税制上「独立企業間原則」に基づき、第三者間であれば設定されるであろう市場利率(arm’s length rate)を考えながら利率を決定する必要があります。

したがって本来的には、借入主である米国子会社の信用格付けを基礎とし、同等の格付けを有する第三者発行体の社債利回りや銀行融資金利を公開市場データ等から参照したうえで貸付利率を設定することが最も望ましいアプローチになります。この場合に論点となるのは米国子会社の信用格付けですが、特に海外子会社については格付機関による公的な信用格付けが付されていないことも多く、その際には実務上、日本の親会社の格付けを起点とし、1〜3ノッチ程度引き下げた水準で評価する手法が一般的です(例:親会社が「A」格付けであれば、子会社は「BBB〜B」水準とみなすなど)。

なお、実際には稀かもしれませんが、米国子会社が第三者金融機関から既に借入を行っており、担保の有無や期間等の借入条件が類似する場合には、当該ローンの利率を基準として用いることも有効な選択肢となります。この場合、第三者と貴社の間における実際の取引金利をもとに設定された利率は、税務当局に対する説明根拠として極めて強力な裏付けとなります。

また米国では、簡便的な対応としてApplicable Federal Rate(AFR)を基準とするセーフハーバールールも設けられています。つまり、AFRに概ね沿った利率であれば厳密なベンチマーク分析を必要とせず、一定の妥当性が認められます(2025年7月時点でAFRは約5%前後)。そのため、実際に簡便法としてAFRの水準を選択される日系企業も少なくありません。ただし、このセーフハーバールールは一定の条件に合致する場合のみしかその適用が妥当と認められないうえ、AFR自体は市場金利と一致しておらず、特定の信用格付けとも連動していないため、両国の税務当局が求める「市場利率」と比較して過小・過大と判断される移転価格リスクが残ってしまう点には留意が必要です。

結論として、日本と米国の両国での税務リスクを考慮する場合には、単なる金利の相場情報だけではなく借手の信用状況に応じた金利ベンチマーク分析を実施し、両国で整合性の取れた水準を設定することが本来的には望ましいといえます。とはいえ、実務上はこのような複雑なベンチマーク分析を都度実施することは現実的ではないので、個別の事情について丁寧に考慮しながら、上に挙げたような簡便的な対応ができないかどうかを模索する方が現実的といえます。

以上、回答になっておりますでしょうか。尚、上記はあくまで一般的な見解であり、実際の利率設定方法は契約条件や借入を行う法人の財務状況等により異なる可能性があります。個別の事情に即した判断が必要な場合は、貴社の顧問税理士または専門家へ個別に相談していただくことをお勧めします。


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