ご相談・お問い合わせ

配当 vs 利息:米国子会社からの資金回収はどちらが有利?|米国公認会計士・米国税理士がわかりやすく解説

2025.07.30
5. 過去のご相談QA
監修者

米国の大手会計事務所にて日系企業を含む多国籍企業の国際税務実務に従事。現在は、同じく米国の日系会計事務所にて会計・税務を軸にアメリカ進出企業のバックオフィス業務を幅広く支援している。日系企業のアメリカ進出を支援する情報メディア「アメリカ進出ナビ」を運営。米国公認会計士 / 米国税理士 (Enrolled Agent)

ご質問の内容

日本本社からうちの米国子会社に資金を入れてもらうことになったのですが、この資金ってあとでどうやって本社に戻すのが一番いいんでしょうか? 配当で返すか、貸付にして利息で返すか、どっちが得か教えてください。

国際税務総合研究所 編集部からの回答

ご質問ありがとうございます。

アメリカの現地法人で財務や経理を担当されている方にとって、「本社からの資金注入をどう設計するか」は避けて通れないテーマですね。とくに現地立ち上げ期では、資金がショートしないように本社から一定のバックアップを受ける場面が多く、そのお金を後からどう本社が回収するのか、本社の経理部門や税務チームから相談されるケースが多いようです。

すでにご認識されている通り、「本社からの出資として受けて将来的に配当で返す」か「貸付金として受けて利息で返す」かの2つがよくある選択肢となります。ただ実務上は、どちらの方が必ず有利というものではなく、それぞれに税務的なメリット・デメリットがあり、会社の利益水準や将来の財務計画に応じて使い分けるのが基本です。

まずは配当で返す場合について説明します。これはアメリカの子会社が黒字化して利益剰余金が積み上がった後、本社に対して配当金を支払って回収する形です。アメリカ側では、配当の支払いは税引後の利益から支払うため損金にはなりません。そして配当支払い時には通常30%の源泉税(支払い時にアメリカへ支払う税金)が課されますが、日米租税条約を適用すれば(株式持分50%以上保有の海外子会社の場合)0%もしくは5%に軽減することが可能です。一方、日本の本社では、海外子会社の株式を持株比率25%以上で6か月以上保有していると、配当収入の95%が非課税になる制度があります(外国子会社配当益金不算入制度の適用)。つまり、「配当で返す」場合にかかる税金コストは「①配当に係るアメリカでの源泉税(0%もしくは5%)」「②配当の5%部分に対して日本で課税される法人税」の2種類となります。従い、税金コストとしてはそこまで大きくありません。ただし注意点としては、そもそも配当を出すには十分な利益剰余金が必要なので、海外子会社が十分に黒字にならないと配当を出せませんし、合弁会社の場合や現地子会社のパワーバランスが強い場合など、配当のタイミングを本社の意向だけで簡単に決めにくいケースがある点に留意が必要です。

一方、貸付金として本社から受けた場合は、一定期間ごとに利息を支払うことで資金を返すスキームになります。この方法は、たとえ子会社が赤字でも現金があれば利息支払いが可能ですし、本社としても早期にキャッシュを回収できるのが大きなメリットです。利息はアメリカ側で損金にできますから、税引前利益を圧縮してアメリカ側での節税効果も期待できます。

ただし、税務コストという点ではいくつか注意が必要です。まず、アメリカから日本への利息支払いには通常30%の源泉税が課されますが、こちらは日米租税条約を適用することで0%まで軽減、つまり免税となります。一方で、日本の本社では受け取った利息収入全額(源泉税を差し引く前の利息収入全額)が課税所得に含まれ、法人税等の対象となります。

また、親子間取引である以上、支払利息の金利設定は移転価格税制の対象となります。市場金利と乖離がないかを説明できるように、第三者間の比較データや契約書などの根拠資料を整備しておくことが必要です。さらに、アメリカには「支払利子控除制限(IRC§163(j))」があり、利息の損金算入には上限があります。具体的には、税務上のEBITDA(利息・税金・償却控除前の利益)の30%を超える利息は、その年には損金にできず繰越対象となります。つまり、借入額が過大になると、せっかく利息を払ってもすぐには節税効果が得られない可能性があるという点にも注意が必要です(といっても、損金にできなかった部分は翌年度以降へ繰越が可能であるため、いずれは節税メリットを享受することが可能です)。

このように、貸付による利息回収はキャッシュの柔軟性が高く節税メリットもある一方で、源泉税、外国税額控除、移転価格、利子控除制限といった複数の税務リスクを事前に精査しておかないと、想定以上の税コストが発生する可能性があります。実行前に全体のキャッシュフローと税負担をシミュレーションしておくことが重要です。

最後に、私共の経験上は「利息の控除限度額いっぱいに利息が発生するような貸付金額を設定し、なお資金注入が必要であれば残りの部分は出資でまかなう」というのがトータルの税コストを最小にするケースが多くなっています(利息控除による米国法人税の節税効果と配当還流による税メリットの組み合わせ効果)。しかし、貴社の利益水準や将来的な財務計画によって最適なスキームは変わってきますので、都度、専門家へご相談されることをお勧めします。

以上、回答になっておりますでしょうか。もしこれから本社と契約書を交わすようなタイミングであれば、単なる一時的な資金需要ではなく、将来的な資金回収の設計も含めて資金回収のアプローチを整理しておくことをおすすめします。また、個別の事情に即した判断が必要そうな場合には、貴社の顧問税理士または専門家へ個別に相談していただくこともご検討ください。

この記事は役に立ちましたか?
米国公認会計士・米国税理士(Enrolled Agent)

米国の大手会計事務所にて日系企業を含む多国籍企業の国際税務実務に従事。現在は、同じく米国の日系会計事務所にて会計・税務を軸にアメリカ進出企業のバックオフィス業務を幅広く支援している。アメリカビジネスの情報メディア「BRIDGE HUB」を運営。

あなたへのおすすめ記事

ご相談・お問い合わせ