ご質問の内容
株式会社XYZのアメリカ現地子会社(アメリカ現地子会社の業態は人材系のビジネスです)に駐在している者です。日本の親会社からの借入金に対する利息を支払う際に(日米)租税条約の適用を受けるため、事前に対応すべき事項と弊社で準備する必要のある書類のリストをご教示いただけますでしょうか。ざっくりとした質問で恐縮ですが、初の租税条約適用対応にて、抜け漏れなく整理したく、お願いいたします。
国際税務総合研究所 編集部からの回答
ご質問ありがとうございます。
結論として、以下4点が貴社および日本の親会社様側でご対応および準備が必要な書類となります(Form SS-4は該当する場合のみ)。
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Form W-8BEN-E:日本の親会社様が作成し、米国子会社側で保管します
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Form 1042-S:米国子会社(貴社)が作成し、米国税務当局(IRS)へ提出します
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Form 1042:米国子会社(貴社)が作成し、米国税務当局(IRS)へ提出します
- Form SS-4:日本の親会社様がEINを持っていない場合のみ、日本の親会社から米国税務当局(IRS)への申請が必要になります
以下、それぞれの必要書類について中身の「概要」と「なぜ必要か」について解説いたします。
1. Form W-8BEN-E
日本の親会社様が自社の「外国法人としての身分」と、日米租税条約に基づく利息の免税の権利を証明するための届出書になります。米国子会社側でこちらのフォームを利息支払日までに受け取り、以後保管しておくことで、「条約適用の根拠を示す書類を保持している」という要件を満たすことができます。こちらはIRSへ提出する必要はありませんが、税務調査時には提示を求められるため、紛失しないよう保管しておく必要がございます。
2. Form 1042-S
米国子会社から日本の親会社様への利息の支払い取引が、「租税条約により源泉税が0%となった取引」として米国税務当局(IRS)に報告する年次情報申告書です。今回のケースでは日米租税条約の適用により、米国子会社から日本の親会社への利息支払にかかる米国での源泉税は免税となりますが、今回のように源泉徴収が無くても、外国法人に対する支払いを行った事実そのものが報告義務の対象となるため提出が必要になります。これにより、IRSは租税条約が適用された取引の規模や内容を把握することが可能となっています。
3. Form 1042
Form 1042-S を提出した者が合わせて提出する、年間の源泉徴収税全体をまとめる総括申告書です。今回のように源泉税額がゼロであっても、条約適用取引を報告した以上は「総括表」としての Form 1042 が必須となります。IRSはForm 1042-SとForm 1042を突き合わせて、源泉税の計算過程や租税条約適用の整合性を確認します。
4. Form SS-4(該当する場合のみ)
日本の親会社様が米国の税務識別番号(EIN)を保有していない場合、まず EIN を取得するために提出する申請書です。W-8BEN-E には EIN を記載する欄があり、番号が無いとフォームが成立しないため、結果的に条約適用を受ける前提条件として必要になります。
よくあるご質問
・Form W-8BEN-Eの中で「EIN」や「Foreign TIN」を記入する欄があります。日本の親会社はこれらの番号を所持していないですが、Form SS-4の提出は必要でしょうか?
→ 必要となります。W-8BEN-Eに関するIRS公式の説明には「You must also provide a U.S. TIN if you are claiming benefits under an income tax treaty and have not provided a FTIN」とあります。日本はForeign TINを発行しない税管轄区域の一つであり、FTINを記載することができないため、結果として日本の親会社様はEINを取得するためにまずはForm SS-4を提出する必要がございます。Form SS-4の申請からEINの発行までは時間を要することが多いため、Form W-8BEN-Eを提出することが判明したタイミングで速やかに EIN を申請されることをお勧めします。
・日本の税務当局へ提出する書類はないのでしょうか?
→ 今回のケースでは、「アメリカで発生する利息支払いにかかる源泉税」に対して租税条約が適用されます。従い、日本の税務当局へ提出すべき書類はなく、アメリカの税務当局向けの書類準備がメインの対応事項となります。
以上、よくあるご質問とともに条約適用に必要な書類を解説いたしました。租税条約は条約締結の相手国によって内容が異なりますので、相手国の税制だけでなく、具体的な租税条約の適用条件を丁寧に確認する必要がございます。個別の事情に即した判断が必要そうな場合には、貴社の顧問税理士または専門家へ個別に相談していただくことをお勧めします。
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